コイカクシュサツナイ川左股本流

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 去年9月、パートナーのK村氏とともに足を踏み入れたコイカク右股沢は岩盤状の滝と巨大な雪渓が連続する険悪の渓相の沢だった。寒さに震えながら必死の登攀を続け上二股から8時間もかけて頂上にたどり着いた。あれからまだ1年とたたないが、再びコイカク沢に入ってみたくなってきた。新たに狙うのは自分にとってまだ未遡行の左股沢本流。右股沢同様に記録の少ない沢である。来月のクマの沢へのトレーニングも兼ねて入渓したが、やはりコイカク沢、一筋縄ではいかない、単独には十分すぎるくらい刺激的な沢だった。


2011年7月24日(日)  
5:10 コイカクシュサツナイ川出合(車止め) 6:10 上二股(640m) 6:45 780m10:25~10:50 コイカクシュサツナイ岳 14:00 780m 14:15~14:30 上二股 15:20 下山

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 ガンバって早起きして4時にはコイカク沢出合の車止めに着いたが、さすがに歩くにはまだ早いのでちょいとひと眠り。30分くらいで起きると霧雨も上がって空には青空もチラホラ。雨の沢も嫌いじゃないが、やっぱり晴れてた方が良い。「いいんじゃあないの~。」と呟きながら準備し、最後にいつも車に積んでいるヘルメットとバイルをザックにつけて・・・・って、ない!バイルがない!・・なぜ?!いくら探してもない!去年の右股沢の状況からバイルが使う場面は必ずあるはずなのに・・・。しばし、呆然とするが、無いモンはどうしようもない・・・。たった一つの道具がないだけで一気に不安な気持ちになる・・・・・こんなんで気落ちするとは俺もずいぶん気が弱い。

 上二股までは退屈なゴーロを1時間である。途中でバイルが落ちてないかな~なんて思ったけど、そんなの都合良く落ちているわけない。上二股からはコイカク頂上に突き上げる左股沢の上部がガスの合間から見え、予想通り雪渓ががっちりと残っている。状態はわからないがかなり大きそうだ。あ~、やっぱりね。不安は大きくなり、緊張感がよけいに高まる。

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 上二股から左股に入り、20分くらいで左股沢右支沢が出合う。荒れた河原をさらに進むと、780mの屈曲点で2段の滝が落ちている。ここからが本流の始まりと言っていいだろう。さぁて、いよいよ。この先どんな渓相が待っているのか、早くも気持が昂ぶる。


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 というか、この2段の滝からイキナリ簡単でない。右岸のカンテから巻き気味に2段目に出てさらに左岸から高巻きに入るが、巻きの途中から沢を確認すると直登不能な滝が続いており、まとめて巻くしかなかった。そしてこの巻きも高度感あり、微妙なトラバース。出だしから容赦ない。

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 沢に戻ってもホールドの乏しい、ツルツルの岩盤状の滝が連続して出てくる。確保があれば多少は直登できそうな滝もあったが、弱気になって高巻きに入る。ところが、高巻きもやっぱりワルイ。急な岩盤の上にイヤラシイ泥つき、まったく根の張ってない草は頼りにならず、つまむ様にして微妙なバランスで灌木帯まで攀じ登る。早くも瞳孔拡大、アドレナリン全開。

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 ドガーンとデカイ滝が現れたり、とてつもない水量がある訳ではないのだが、一つ一つが手強くアナドレナイ。初っ端からのキビシイ渓相に先への不安がプレッシャーとなって押しかかってくる。この手の沢は下手に突っ込むと進退が取れなくなる事もある。進むにつれ、喉がカラカラになるような緊張感というか不安感がますが、そんな状態が嫌いではない自分がいる。沢屋はみんなキチガイだ。


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 1時間ほどかけてこの連瀑帯を抜けるとそこで待っていたのは劣悪な雪渓。950mくらいかだろうか。近づくと遠目で見た以上に大きく、抜け口の状況は見えない。中は行けそうもないので、とりあえず左岸のシュルンドと側壁の間をトラバースするが、少し進むと、雪渓に大きく亀裂が入っており、その亀裂から先のトラバースがあまりにワルイ。
“撤退”の2文字が頭をかすめるが、諦めきれず一旦戻ってから右岸のシュルンド脇を行く。すると意外と何とか行ける。しかし、最後がすっぱり切れ落ちており、雪渓の上から2mのジャンプが必要だった。

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 雪渓を超えると現れるのはこの7m(?)直瀑。直登できず左岸の岸壁から小さく巻いた。

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 さらに崩れた雪渓の残骸を乗り越えると10m斜瀑。

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 これはキビシイ~と思って近づくと、意外と左岸水流脇から直登できる。ただ、所々ヌメルのでちょっと緊張する。

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 斜瀑を超えるとまたデカイ雪渓。ただし、今度は簡単に左岸から処理できた。1150m付近。

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 次第に沢はゴルジュ状となってくる。この滝は中央のクラックを頼りに直登。そんなに難しくはないが斜度もあるし、最後はそれなりの高さもあり緊張した。ここからはシャワークライムも多くなる。

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 逆層気味の滝、キビシイ登攀はなおも続く。晴れていた天気も再び崩れ、霧雨模様。ずぶ濡れになりながら必死に一つ一つの滝を登っていく。

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 V字状のゴルジュに滝が連続。突っ張りながら瀑水浴びて突破するしか手はなし。連続する滝にさすがに「いつまで続くのよ~。」といった感じ。

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 この滝を超えるとようやく、ゴルジュ帯が終了。またも雪渓が現れ、それを超えると、核心部は終わりを告げた。

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 源頭付近になると、再び天気は好転。稜線の向こう、青空が見えだした。沢型は稜線直下まで続き、ほとんど藪こぎがない。最後は右手に北大の遭難碑を見ながら急斜面を攀じ登り、稜線に這い上がった。

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 上二股から4時間少々で頂上。単独でもこの時間。パーティーだったらザイルも出してだろうし、少なくとも6時間はかかるのではないか。頂上からの展望はガスがかかっており、日高の稜線はほとんど見えず。わずかに見えた1839の北面に深く切れ込んでいる無名沢の上部はコイカク沢同様大きな雪渓が残っていた。

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 さて、下山。ここで優柔不断な自分はずいぶんと悩んだ。安全な夏道を下るか。今遡行してきた左股本流を下るか。渓相を思い返して導き出した答えは「自分なら下れる。」「自信過剰か、いや、大丈夫だ。たぶん・・・・。」だいたい、夏道下ったら楽だけど、途中で後悔するのは分かりきっている。僕が山をやる上でこだわっていることは“後悔するような山はしない”ということ。迷った時はいつもその気持で自分の行動を判断しているつもりだ。もちろん無謀な行動をする、ということではない。
 再びヘルメットをかぶって稜線から飛び降りるように沢を下る。日が差し込んできた渓は先ほどのような険悪さは感じないが、沢が簡単になったわけではもちろんない。


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 クライムダウンはもちろん、巻きも神経をすり減らす下りが続く。しかし、巻いていると最近つけられた様な踏み跡が所々ある。こんな沢でも入渓者がいるのは驚き。こんな沢に入るのはかなりマニアックな人と思われるが、記録があるなら是非読んでみたい。


 懸垂も数回したが、やはり支点に苦労した。最後の方は流木に直にザイルをかけて懸垂。この流木がなければ相当困ったと思う。

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 上二股に帰り着いたときは本当に緊張感から解放されしばらくボーっとしてしまった。車止めまでの河原もフラフラ。日帰りでこんなに疲れたのは久しく記憶にないがこれだけの充実感もまた久しぶり。先週に続いて余韻に浸れる沢に行けたのは本当に幸せだ。
 
 今回は日帰りで左股沢本流の往復だけであったが、いずれはコイカク沢から日高側の無名沢やサッシビチャリにつなげる沢旅をしてみたい。5泊くらいの長い時間をかけてゆっくりとそしてじっくりと日高の渓に浸りたい。


 


  

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この記事へのコメント

naokiss
2011年07月31日 21:31
いやぁ、写真で見るとあまりにも変態的過ぎて思わず苦笑しちゃいましたよ(^^;
こんな極い登りを終えて、さらにそれを下ろうという発想が信じられません!!
ぼくは沢は日和ますが、冬はお手やわらかにお願いしますm(_ _)m
oyama
2011年08月04日 20:29
naokiss君
そう言わずに沢も行こうよ。せっかく日高の近くにいるのに、もったいないって。とりあえず9月の3連休あたり、どう?
沢犬
2011年08月09日 05:33
いいなぁ~沢行きたいなぁ。
熊の沢今の充実ぶりなら、まったく問題ないと思いますが、最後まで気を抜かないように。楽しんで来て下さい。
oyama
2011年08月10日 21:11
沢犬さん
どうもです。クマの沢、結構緊張してます。もちろんそれ以上に楽しみでもありますが。
どうですか9月にでもなんとか沢行けませんか?2泊3日でヤオロマップ岳のサッシビチャリ南面なんてどうですか!?

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    Excerpt: コイカクシュサツナイ岳北東面直登沢[text/xml:29kB] ルート名 コイカクシュサツナイ岳北東面直登沢 距離(km) 2.65 標高差(+m) 1075 標高差(-m) 10 行動.. Weblog: オタクは山が好き?~北海道・日高山脈・大雪山系・増毛山塊・ニセコ連峰の沢登り・山スキー~ racked: 2011-07-30 07:51